中国古典

【韓非子】をどこよりもわかりやすく解説しています

韓非子かんぴしは約2000年前、中国の春秋戦国時代(漫画キングダムの舞台にもなっている時代)に君主(国の王)に求められた必要なスキルが書かれた書物です。わかりやすくいえば国を治めるための教科書みたいなものです。

今回は韓非子について、どこよりもわかりやすく解説していきましょう。

ぼくがおすすめする韓非子の入門書です。こちらの本を参考にさせていただき今回の記事を書きました。

韓非子をわかりやすく解説

韓非子とは人物であり、その書でもあります。

今から約2300年近く前の中国、時代は春秋戦国時代に韓非子は生まれました。姓は【韓】で名は【非】です。

中国では敬意を表す人物に【子】という名称で呼ぶ事があります。日本でいう先生というのと同じだと考えていただければと思います。普通は、姓に【子】を付けて呼ぶものです。たとえば、孫子という人物を聞いたことがある方も多いでしょう。孫先生という事です。

ただ、有名な詩人に韓愈(かんゆ)という人物が韓子と呼ばれており、韓非は、フルネームで韓非先生(韓非子)と呼ばれそれが受け継がれ現在でも韓非子という名称が語り継がれています。

その韓非子の書いた書も【韓非子】と呼ばれています。この書こそ現代でも受け継がれているリーダーに求められる教科書と言われているわけです。

リーダーに求められる教科書 韓非子

韓非子はリーダー、当時でいう君主(国の王)に必要とされたスキルを書いた教科書です。

韓非子が生きた時代は戦国時代の真っ只中で、騙す事や命を狙われる事なんて当たり前の事でした。そんな時代でも国を治めるに必要なスキルを書いたという事です。韓非子の思想は法家思想と呼ばれており、国を治めるには絶対的な法律が必要であると説いています。

そして韓非子は持って生まれた資質や才能は関係がない。そんな人物は千年に一度くらいにしか生まれてくる事は無いんだから、いたって普通の人物が君主になっても国を治められると語っています。

普通の人物でも国を治められる

普通の人物でも国を治められる方法は2つあると韓非子は説いています。

【法】と【術】の2つがあれば国は治められると書かれています。

法とは 今でいう法律です。当然、我々が生きている日本でも法律というのはもはや生きている時からあるので当たり前のものですよね。韓非子が生きた時代は2000年以上も前ですから法というものがそこまで定着していなかったのです。

術とは 君主(今でいうリーダー)が持っていなければいけないスキルです。その具体的な術は韓非子の中に紹介されています。人をコントロールする術です。

なぜ、法が必要なのか

人間は利によって動くからです。

韓非子はその【利】に歯止めを掛けるために、法を確立する事が大事だと説いています。【利】とは、今でいうとお金が欲しいとか出世したいとか良い家に住みたいとか、人間の欲望ですね。自分にとって利益がある事に対して人は行動をしていくと言う事です。利益がある事に動き、不利益な事は行わないという事ですね。それを実行する為には信賞必罰が重要であるといっています。

信賞必罰とは 法を守りよい行いをすれば恩賞(褒美)を与え、法を破れば必ず罰せられる事。そういう法律でなければダメだという事もいえます。当然人は刑罰に恐れて恩賞には喜ぶものです。

利を極端に言えば、君主の実の息子でも君主を殺せば息子の自分自身が政権を握る事になり、全てを手に入れられる場合には君主を暗殺してしまう場合があるといわれます。実際にこの時代は君主は病死よりも暗殺により亡くなるケースの方が多かったと言われています。ここで韓非子の中から有名な一説を紹介しましょう。

医者が人の傷口を吸い人の血を口に含むことまでして治療をするのは、患者との間に肉親同士のような親愛の情があってそうするのでは無いのである。そのようにすることが利益の得られることだからである。だから車作りの職人が車を作り上げれば、世間の人ができるだけ多く金持ちや高い身分になることを願い、棺桶作りの職人が棺桶を作り上げれば、世間の人ができるだけ早死にすることを願うのである。車作りの職人が思いやりがあり、棺桶職人が凶悪な人間だからというわけでは無いのである。人が高い身分にならなければ車は売れないし、人が死ななければ棺桶が売れないからである。

韓非子 備内(びない)編より

車を作る職人が皆が裕福になって欲しいのは思いやりがあるわけでもなく、棺桶を作る人間が人が死んで欲しいと願うのは凶悪な人間だからでなく、全て自分の利益が上がる為だからであると説いてます。このあとに続いて【利】があれば君主の妻も子供も自分を暗殺してしまう可能性があると韓非子は続けています。

この様な考えの根本は荀子という性悪説を説いた先生のもとで教えを受けた為、大きく韓非子の中で影響を受けていると考えられます。

性悪説とは 人は生まれ持って悪であるという考え。韓非子の先生だった荀子は人は生まれた時は獣となんら変わらないとまで言っています。

なぜ、術が必要なのか

韓非子が生きた戦国時代には君主の臣下(部下)が政権を自分の手で握りたい者も多く、あの手この手で君主を騙して実権を奪わおうとしてしまう部下が多くいました。

実際に、部下に実権を握られてしまう君主も多くいました。当然、優秀な部下なんてゴロゴロいるわけですよ。君主は当然、血族同士で受け継がれていくのが原則ですので、当然部下よりも能力が低い君主が出てきてしまうわけです。繰り返しになりますが、そんな環境でも普通の君主が術を使う事により国を治められる事が韓非子に書いてあるんです。そこには君主は二柄が必要であり、絶対に手放してはいけない物だと言っています。

君主に求められる二柄とは

二柄とは単純に訳すると二つの斧という事です。君主は左手に【賞】・右手に【罰】の斧を持っていなければいけないという事です。

よって、君主は好き嫌いの感情に流される事なく、法に基づき信賞必罰を実行していけば良いという事です。この信賞必罰(すなわち二柄)のどちらかでも他の人間に決定権を与えてはいけないとされています。人は利益で動くという韓非子の考えですので、利益になる恩賞と不利益となる刑罰の決定権を手放しては人民や部下のコントロールが出来なくなってしまうという事です。2つの斧(二柄)を君主は手放してはいけないのです。

臣下(部下)を制御する為に必要な物は二柄のみ。とまでいっています。

こんな一説があります。

そもそも虎が犬を服従させることができるのは爪と牙が有るからである。もし虎にその爪と牙を取って犬に付けさせたら虎はかえって犬に打ち倒されるであろう。君主というものは、刑と賞によって君主を制御するものである。ところが、もし人の上に立つ君主が、その刑と罰との2つ柄を投げやって、臣下に勝手に用いらさせたなら、君主はかえって臣下に制御されてしまうだろう。

韓非子 二柄(にへい)編より

いかに、2つの柄である信賞必罰が大事かが分かる例え話です。

韓非氏の有名な術 7術を紹介

まず韓非子は全部で五十五編として壮大な量があります。

その中で、抜粋して紹介したいのは韓非子の中で【内儲説(ないちょぜい)】に書かれている君主に必要なスキルである7術です。

リーダーに必要な【7術】

リーダー(君主)に必要な術として七つの術を具体的に書かれています。

7術

①参観(さんかん) 色々な人の言行を照らし合わせてみる

②必罰(ひつばつ) 必罰をもって威厳を明らかにする

③賞誉(しょうよ) 信賞をもって能力を尽くさせる

④一聴(いっちょう) いちいち臣下(部下)の言を聴き、その結果が言に一致することを求める

⑤詭使(きし) 故意に疑わしい命令を出したり、逆の命令を出したりして臣下(部下)を惑わせる

⑥俠智(きょうち) 知っていることを知らないふりをして臣下(部下)に尋ねてみる

⑦倒言(とうげん) 褒めるべきものを反対に叱ったり、憎む相手を可愛がったりする

⑤とか⑦とかを実行している人がいたら何を考えているか分からない人ですよね。そうなんです!そこが大事なんです。主に求められるスキルは、部下に感情を読み取られてはいけないという事なんですよね。感情や好き嫌いに流されると部下に付け入れられる隙が出来てしまうという事です。よって君主たるもの隙を見せてはいけないという事です。

韓非子が語源になったといわれる言葉も紹介しています。

韓非子の最後

韓非子は、現世までに受け継がれるリーダーに求められる教科書をこの世に残しました。ただ、韓非子自身は、これを使う機会に恵まれる事はなく生涯を終えています。

韓非子は、韓という当時は最弱といわれていた国に生まれました。当時の思想家達は国の君主に仕える事が理想とされており、韓非子は中々その機会に恵まれる事はありませんでした。そのある日、秦(しん)という当時の最強国の君主(のちの始皇帝)が韓非子を読み「この作者と会って話せるなら死んでもよい!」と言わせるまで感動を受け、韓非子を秦の国に招待をします。

それに危機感を覚えた秦の君主に使えていた臣下の李斯(りし)が策略を考えて、韓非子を牢獄に閉じ込め、さらに自害するように毒を渡しました。韓非子は牢獄の中で自ら毒を飲み自害をしてしまうのです。

この策略を考えた李斯(りし)という人物は韓非子と一緒に荀子に教えを受けていた今でいう同級生のような人物でした。しかし李斯自身も韓非子がくる事で自分の地位を脅かされる。すなわち不利益になってしまうと考えて当時の同級生を殺害まで追い込んだという事です。

そんな生涯を送った韓非子だからこそ、人間の本質に迫ったリーダーに必要な教科書を書く事が出来たのでしょう。

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ぜひ、興味を持ってもらえた方はおすすめの入門書を読んでみてくださいね!!

 

中国古典について記事を書いています。

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サラリーマンブロガー『べべくん』
べべくん
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