日本資本主義の父・実業界の父と言われた渋沢栄一氏が書いた書籍です。
大正5年(1916年)に刊行されたので今から、何と100年以上前の作品なんですね。
今でも読み継がれている古典『論語と算盤』を今回は分かりやすく解説していきましょう。
論語と算盤とは
・日本資本主義の父・実業界の父と言われた渋沢栄一氏が書いた書籍
・論語と商売の合理性を説いて日本の経済を豊かにした
・知識でなく実学を身につける大切さを知れる
日本資本主義の父・実業界の父と言われた渋沢栄一氏が書いた書籍
今の皆さんの生活に当たり前のようにあるJR、日経新聞、サッポロビール、中野 みずほ銀行などの設立に関わった人物である。
渋沢氏は、約600社近くも企業に関与したと言われています。
日本の資本主義というのは自分の利益を最大にして金持ちになりたいとかいう欲望をエンジンとして進んでしまう傾向がある。
他人の利益など関係なしに自分だけが儲かればいいという風にですね。
あなたが会社を起業したと想像してみましょう。ライバル会社に負けないように。利益を1円でも多く儲けたい。と考えてしまいませんか?
それこそ資本主義の落とし穴であり、結果としてそのように自分の利益だけを追求してしまう人たちが増えたとしたら、どうなるでしょう。
結果として国は豊かにならず、個人も最終的には豊かにならないであろうと渋沢氏は説いたのです。
そこで、渋沢栄一氏は論語を取り上げた。
渋沢氏は論語を実業・商売を行う上での見本・規範にしたんです。
論語で一生を貫いてみせる。と言った渋沢氏ですが、論語とはそもそも何なんでしょう?
論語は中国の春秋時代(今から約2500年も前です)に活躍した孔子という人物と、その弟子たちの書物です。
『人はどう生きるべきか』や『人間としての振る舞い方』を説いています。儒教の根幹だと言われています。簡単に言ってしまえば道徳という事でしょう。
論語の有名な言葉に「人にされて嫌な事は他人にもしない事だ」とあります。人の本質の生き方を学べる本として現在でも語り継がれております。
そのような論語を資本主義の経済で規範にする事は、一見噛み合わない組み合わせだと思われました。
しかし、渋沢栄一氏は論語の根本的な人間の道徳と経済合理性を一致すると説き、結果として日本を豊かにし成功を収めた人物です。
ただ、本書の中で成功や失敗は人間の残りカスのようなもので、人間を評価する基準ではないと言っています。まさしく論語を規範とされた人物ですね。
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論語と商売の合理性を説いて日本の経済を豊かにした
タイトルの論語と算盤とあるように、渋沢氏は2つの合理性を説いて日本の経済を豊かにした人物です。
なぜ、論語なのか?
渋沢氏は人の中に一生大事にしていく信仰を持つ事が大事であると言っています。
そこで渋沢氏は論語という信仰・考えかたを大事にして人生を生きたのでしょう。
人それぞれ信仰するものは違うと思います。例えば仏教とかキリスト教などの宗教を信仰されている方もいるでしょう。
何であれ自分の中で大きな志、すなわち立志する事が大事だと言っています。
まずは、大きな志を持ってから小さな志を持つ。小さな志はその大きな志からはみ出さない物にする。
渋沢氏は論語と宗教の違いには奇跡があるのか無いのかもあると言っています。例えばキリスト教であれば、キリストは磔にされてから3日後に蘇生をしたという奇跡がある。
ただ、論語にはそのような記述はない。論語の一節では弟子が死について尋ねられた時に「生きている意味も、まだ分からないのに死んだ後の事をなぜ分かるのか」と説いています。孔子は、そのような神秘性な事について一切語らなかったという節が論語にあります。
渋沢氏の考えでは宗教も論語も最終的に目指すべきゴールは一緒であり、手段が違うだけだと考えていたそうです。
例えば、キリスト教の愛と論語の教えである仁。キリスト教の方では「自分がして欲しいことを他人にもしなさい」と教えているが論語孔子は「自分がして欲しくない事は他人にもしない」と反対に説いています。
手段は異なるだけで、目指すべきゴールは同じだったのではないかと。
だから渋沢氏は自分の中に人生を生きる志となるような信仰を持つ事が大事だと言っているのでしょう。
その志からはみ出ない生き方をしましょう。
士魂商才という言葉を大切にした
士魂とは、人の世の中で自立していく為には武士のような精神が必要である。しかし商才、商売の才能がなければ経済の上で自滅していく事になってしまう。
気持ちだけ強い志を持っていても経済に活かす手腕がなければ、大きな事は成し遂げられないということでしょう。
この士魂を養う事ができる書物こそが論語で養えると考えたのです。
社会で生き抜いていこうとするのなら、まずは論語を熟読しなさいと言っています。
武士のような士魂を持った上で、手腕を十分に発揮しなさいという事です。
どんなに能力や情熱があったとしても目指すべき考え方が悪ければ、悪い結果を生んでしまいますからね。
知識でなく実学を身につける大切さを知れる
渋沢氏は、ただの知識でなく世の中に役に立つ実学を身につける事が生きる上で重要になると言っています。
論語こそ、まさに実学を学べるという事です。実学とはスキルとかではなく人が生きていく為の考え方です。
智・情・意の3つが大事であり、これを常識にすべしと言っています。
智(知恵)
正しいことや間違っている事、プラス面やマイナス面を正しく判断できる力
情(情愛)
人の感情ですね。喜怒哀楽。人間力
この情が人間のバランスをとっており、情というものが人間社会からなくなってしまったら滅びてしまうでしょう。
しかし情にも欠点があり、瞬間的に湧き上がりやすい為、流されやすい性質があります。時にカッとなって怒鳴ってしまったり。
意(意思)
自分の志や意見。自分の感情をコントロールする事ができる力です。
強い意志の上に、賢明な知恵を持って、これを情愛で調節していくという事です。
この3つが大事であると説いています。この3つのどれかが欠けてしまってもダメだし、行き過ぎてしまってもダメだという事です。
あくまでも中立・バランスを持って得ていく事が大事であると言っています。
この3つの能力を高めて自分から箸を取りに行く事が大事であると説いています。自分で箸を取りに行くというのはチャンスがあれば自分の物にする。
渋沢氏は論語は全ての職務に通用すると説いています。すなわち、人間の根本の考え方を学ぶ実学が必要であるという事です。
最後に
論語と算盤は大正時代(1916年)に書かれた書物ですが、現代社会にも十分に通用する内容だと思っております。
渋沢氏は正しい道を行った結果、得られる利益は悪ではないと主張されています。個人が豊かになりたいと思わないで、どうして国が豊かになろうか。
渋沢氏が信仰した論語。熟読する事が大事だと教えてくれています。
論語読みの論語知らずというような言葉がありますが、この機会に論語に触れてみてはいかがでしょう?